子供がいない叔父の家を、独身の私が相続した。
その家に彼女を誘うと、「怖いから嫌だ」と断られた。
叔父と血の繋がりがある私ですら怖いと思うのだから、彼女が断るのは無理もない。
ネットのマップで相続した家を調べると、庭木はキレイに剪定されているのだが、築年数が古いだけあり、外壁の塗装が至るところ剥げている。
もし、雨漏りでもしていたら家の価値が下がるため、1人で相続した家を見に行った。
ポストには沢山のチラシが入っており、庭は荒れて草がボーボーに生えている。
門を開けようとすると、錆び付いており「ギー」と鈍い金属音がする。
その音を不審に思った隣の家の犬が鳴くと、隣の家の人が出て来た。
隣の家の人、「不動産屋さん?」
私、「違います。こちらに住んでいた者の親戚です」
隣の家の人、「この家を相続したの?」
私、「はい」
隣の家の人、「悪いけど、うちの庭を見てくれる」
隣の家の庭には、相続した家の外壁の塗装片が沢山落ちていた。
隣の家の人、「塗装片に付いたサビが、洗濯物や車を汚され迷惑をしているの」
私、「スイマセン」
隣の家の人、「他の人も迷惑してるみたいよ」
私、「スイマセン」
相続した家のポストに入っていたチラシの中に、塗装業者のものがあった。
そのチラシには、「〇〇万円ポッキリで家を丸ごと塗装」とプリントされているのだが、〇〇の中だけ手書きで金額が書かれていた。
家を見て金額を割り出したのだろうが、勝手に家を査定されたようで良い気はしなかった。
家に帰ると
彼女、「相続した家はどうだった?」
私、「外壁塗装が剥げていて、ポストにはこのチラシが入っていた」
手書きの金額が書かれているチラシを彼女に見せると、
彼女、「車の全塗装と変わらないじゃない」
そのチラシには、「補助金で更に安くなる」とも書いてあり、何の補助もない車の塗装より、大きな家の外壁塗装のほうが安かった。
隣の家に迷惑を掛けてはいけないため、相続した家の外壁塗装を行うと、迷惑を掛けていた隣の家の人から感謝されたのだが、相変わらず彼女は「怖いから」との理由で相続した家には来てくれません。